『ピンハネ屋』と呼ばれて

株式会社リツアンSTC 代表取締役 野中久彰

派遣社員の平均年収を調べてみました

 今回は、派遣社員の職種別の平均年収について調べてみました。資料は、厚生労働省『平成26年度 労働者派遣事業報告書』を使います。この事業報告書には、全国の派遣社員の平均賃金が職種別で掲載されています。この平均賃金から平均年収を計算してみました。

www.mhlw.go.jp

事業報告書の集計表

 平均年収を見る前に、この事業報告書のデータをまとめたものからご紹介いたします。平成26年度の全国平均のマージン率は「一般派遣」で31.5%、「特定派遣」で36.0%でした。また、1日当たりの平均の派遣料金は「一般派遣」で1万7282円、「特定派遣」で2万4062円、派遣賃金(給料)は、「一般派遣」で1万1840円、「特定派遣」で1万5408円という結果になりました

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職種別の派遣社員平均年収ランキング

  上記の事業報告書のデータをもとに算出した派遣社員の平均年収ランキングの第1位は、特定派遣の「セールスエンジニア、金融商品」の職種で491万6880円、第2位は「事業の実地体制の企画、立案」で487万8000円、またリツアンが主に担当する職種である「ソフトウエア開発」は第4位で444万2880円、「機械設計」は第5位で425万2800円、「研究開発」は第6位で416万5440円という結果になりました。

 専門性の高い分野は、派遣料金も平均年収もともに高く、逆に馴染み易い職種は平均年収も低い傾向にあります。また、同じ職種でも「一般派遣」よりも「特定派遣」の分野の年収は高く、これは仕事の上流工程を正社員(常用雇用)の特定派遣の社員が主に担当し、下流工程を一般派遣の社員の方が担当している結果だろうと思われます。

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年収300万円未満が16職種もある現実

  ただ、私が今回の調査で特に問題視しているのは、40位「放送機器等操作」(一般派遣)から最下位の「建築物清掃」(一般派遣)までの全16職種で平均年収が300万円未満だった点です。

 例えば、正社員男性の平均年収は514万円だといわれていますので、年間200万円近くの給料差になってしまいます。

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raorsh.com

 さらに今回の年収調査は「政令で定める業務」の職種のみです。派遣社員のなかでも最も従事者が多い生産工程労務(製造派遣)は含まれておりません。

 下記の記事によれば、製造派遣の彼らの年収を含めると実に77%の方が年収が200万円以下だといわれています。もちろん、この77%には女性のいわゆる「所得税、扶養控除の年収103万円」の層も含まれているため、それが比率を高める結果になっていますが、ただ男性でも年収200万円以下が60%もいますので、やはり「派遣社員の低賃金の問題」は深刻です。

 

『派遣社員の年収の実態を賃金構造基本統計調査を参考に詳しく調べました』

 

【男性】
 ・100万円未満=30%
 ・100万円~199万円=30%
 ・200万円~299万円=20%
 ・300万円~399万円=10%
 ・400万円以上=10%

【女性】
 ・100万円未満=60%。
 ・100万円~199万円=35%。
 ・200万円~299万円=9%。
 ・300万円~399万円=1~2%。
 ・400万円以上=ほぼ0%。 

 

派遣会社はどれだけ利益を出しているの?

 では、派遣社員の方が年収をUPさせるためにはどうすればよいのでしょうか?もちろん派遣会社の売上総利益(以下、利益)を派遣社員に還元すれば年収も上がりますが、下記の表をご覧ください。

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 この表は派遣会社の毎月の利益をまとめた表です。利益をだす算出方法は「派遣料金」から「派遣賃金」と「社会保険や雇用保険の事業主負担額」を差し引きいて計算しました。ちなみに「社会保険料及び雇用保険料の事業主負担額」は、売上高に対して10%で計算してあります。

 これによれば派遣会社の平均の月額利益は、「一般派遣」で6万9630円、「特定派遣」で11万2735円でした。また年収300万円以下の16職種の平均利益は5万7437円しかありません。

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 そして、派遣会社はこの薄い利益から「会社運営費(内勤給料、事務所家賃、採用費、営業活動費)」や派遣社員への「教育訓練費用」なども捻出しなければなりません。派遣会社の売上総利益も低額ですが、そこから上述の「会社運営費」を差し引いた会社の最終利益はさらに薄利になります。

 従って、派遣会社が利益を給料に還元したくてもできないのが現実だといえるかと思います。仮に派遣会社が自社の利益を削り、それを給料に還元しても、できて毎月1万円~2万円。これでは派遣社員の低賃金の問題の根本的な解決にはなりません。

 

派遣社員が年収をUPさせる秘訣とは?

 では、どうすればいいのか?私の見解ですが、派遣社員の皆さんの個々人が高みを目指し、できるだけ今よりも専門的な分野へ挑戦すべきだと思います。専門的な職種は平均年収も高く、またその後の転職にも有利に働きます。

「そんなの誰にもわかっていることだ」、「知識がないからできないんだ」、そんな声が聞こえてきそうですが、人材ビジネスに身を置く私からすれば今は本当にチャンスの時です。採用現場では、人材不足が深刻な問題になっています。採用市場にはベストマッチする人材はいないことをクライアントの多くは気づいています。1年、2年と辛抱強く待って人材を探すよりも、類似した経験を持つ者を採用して自社で育てようとする方向に傾斜しています。

 ただ、多くの人が経歴を高めるためにはスキルアップしなければならないと考えてしまいます。そして、スキルアップできる職種につくためには、まず社会人向けスクールに通い「基礎知識」を学ばなければならないと思ってしまうのです。もちろんスクールに通い学ぶことは否定しませんが、ただ悲しいことに「基礎知識」の習得は採用の現場では、あまり評価の対象になりません。

 もし私が派遣社員の皆さんの立場であれば、社会人スクールに通って学ぶ時間を、自分にとっての有利な転職情報を探す時間にあてます。転職の成功の秘訣は「転職情報のアンテナ」と「タイミング」です。自分にとって有利な転職の情報は、天から降ってくるものではなく、自ら取りにいかなければなりません。常にアンテナを高く保ち、有利な情報を得たらすぐに飛びつくフットワークの軽さ、これが転職を成功させるポイントだと思います。

 

まとめ

・年収をUPする為には専門的な職種へ転職するべき

・基礎知識や資格は採用の現場ではあまり評価に値しない、

・転職情報のアンテナを高く保ちフットワークの軽さが成功の秘訣

 

 

 リツアンでは、未経験から挑戦できる職種も沢山あります。特に若い世代にとっては チャンスだと思います。エンジニアの仕事にも専門的な上流工程と比較的馴染み易い下流工程があります。まずは、下流工程からスタートして現場で働きながらスキルを磨いていくことをおすすめします。過去の『他業種からエンジニアへシフトチェンジ』の記事でも紹介していますが製造経験しかなったS君は、彼の人柄や勤怠が評価され今では立派なエンジニアに成長しました。時給も製造派遣時の1,250円から2,450円にUPしました。年収も若干20歳で500万円を超えます。そして、今の自動車部品の実験評価の経験は、彼が将来転職する際に必ず有利に働きます。転職情報のアンテナを高く保ち、自分にとって有利な情報に勇気を持って飛び込んでいくこと、それを強く推薦します。

 

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