『ピンハネ屋』と呼ばれて

株式会社リツアンSTC 代表取締役 野中久彰

リツアンSTCが「やりたいこと」(理念、使命、社会貢献について)

 

01.はじめに

エンジニアの皆さんと居酒屋でお酒を飲んでいると、リツアンの将来の目標について聞かれることがあります。それについて僕も一生懸命に話すのですが、アルコールに飲まれ呂律が回っていませんので上手に伝えることができません。

 

ですから、お酒を飲んでいない今日、リツアンSTCが「やりたいこと」について文章をまとめてみました。ただ、小学校のころから国語が苦手でしたので、だらだらとした長文になってしまいました。ごめんなさい。僕がエンジニアの皆さんに伝えたいことは、目次の09~11まです。この箇所だけもいいので、お時間がある方はお付き合いお願いいたします。

 

また、以下の文章では、労働者という言葉を多用しています。僕は個人的には、労働者という言葉は労使という上下関係を連想する言葉ですから好きではありません。ただ、文章の構成上、どうしても便宜的に使ってしまいました。こちらも、ご容赦お願いします。

  

02.やりたいこと

結論から先にいってしまえば

「安月給で休みも少ないけれど、いまの仕事はものすごくやりがいがあって満足している!」と目をキラキラ輝かせて語る人を一日でも早く救ってあげたい。

  あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 

これがリツアンのやりたいことです。リツアンの年商が数百億円とか株式上場とか、そういうのには興味はなく(まぁ、ないよりましですが)、それよりも彼(彼女)のような目をキラキラ輝かせて語る労働者の目を覚ませてあげたい。

 これができれば、リツアンを設立した意義は報われ花丸💮です。

  

03.日本人の仕事観について

まず、日本人の仕事観からみていきます。日本人には、昔から仕事を尊ぶ文化があります。日本には仕事に感謝するという祝日があるほどですから。

 

勤労感謝の日とは、祝日法で「勤労をたつとび、生産を祝い、国民がたがいに感謝しあう」とされています。勤労は心身を労して仕事にはげむこと、たつとびは尊ぶこと。

 

つまり、勤労感謝の日とは「心身を労して働き、働くことを尊び、生産を喜び、国民がたがいに感謝しあう日」ということになります。

 

また、祝日法に関して記した「日本の新しい祝日(衆議院文化委員受田新吉著)」には次のような記述があります。

「肉体的な労働によって物品等を生産するということにのみ終始するものではなくて、精神的な方面においても一日一日を真剣に考え、物事の本質へと深めてゆく研究態度にも勤労の大きい意味は存在し、創造し、生産していくことの貴重な意義ある生活が営まれていくことが出来る。物質的にも、精神的にも広い意味での文化財を建設してゆくことは、生産ということの正しい理解の仕方である」

勤労感謝の日を子供に説明しよう。成り立ちを知り、わかりやすく! | かめねず!

 

要するに11月23日は、国民が精神的な部分を含めた労働についても感謝する日です。この考えがもとで日本人には「働くことは尊いこと」との仕事観が生まれました。

 

そして、この仕事観は、学校教育によって世代を超えて受け継がれていきます。学校の先生は、子どもたちへ“働くことは尊い”と教えます。また、家庭でも“働くことは尊い”と教えます。そう教える先生や親もまた学校で“労働は尊い”と習ってきました。

 

ただ、学校の職業教育は、労働の「尊い」という精神的な部分ばかりに重点が置かれています。職業教育は、労働を無条件に賛美します。どんな仕事も尊く、労働は生徒を成長させてくれるものだとほめ称えます。

 

これにより、いつしか日本人は仕事に「自分の成長」や「自己実現」などの精神面を強く求めるようになりました。仕事は給料よりも「やりがい」の方が大事だと日本人の多くが思うようになったのです。

 

本来、労働の「成長」や「自己実現」という精神的な部分は、二次目的であるはずです。法律でも労働者を「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」(労基法第9条)と定義しています。

 

労働の一次目的は、人が生きていくために必要なお金を稼ぐことです。労働の精神的な部分は、一次目的が達成した後に訪れる副産物に過ぎません。

 

ですから、日本人は「会社に労働力を提供するかわりに労働者は報酬(給料)を得る」という労働の一次目的にもっと関心を寄せるべきです。

 

04.日本人のお金観について

ただ、日本人は、労働の一次目的の報酬(給料)ついて人前で話すことを嫌います。

 

お金に対して、日本人はマイナスのイメージを持っているからです。

 

「守銭奴」、「金の亡者」、「拝金主義」などの言葉が示すように、日本人はお金にこだわることを「卑しい」ことだと考えています。この結果、労働者は給料にこだわることを「はしたない」とおもい、給料について人前で口にすることを避けてしまうのです。

 

しかし、この日本人のお金に対するマイナスのイメージは、江戸時代に意図的につくられたものです。

 

江戸時代の、経済基盤はお米(穀物)でした。江戸幕府の収入も武士への給料もお米で計算されていました。幕府は、国の経済を安定させるためには、お米の生産を安定させる必要があります。この理由で、幕府は朱子学の貴穀賤金(きこくせんきん)主義を採用します。貴穀賤金とは、米穀を尊重し、金銭を卑しむという思想です。

 

ご承知の通り「士農工商」の身分制で農民は上位に置かれ、商人は下位に置かれました。農民は汗水たらして米作りに励むから尊い。逆に、商人はそのお米を右から左へ流通させるだけで儲けるから「卑しい」としました。

 

この貴穀賤金の思想により、日本人は、お金にこだわることは「卑しい」と考えるようになってしまいました。いまでも日本人の多くは、米作りのように汗水たらして稼いだお金は尊く、らくして儲けることは悪いことだと感じます。日本人の多くが投資などで得た不労所得に強い抵抗感を示しますのは、この思想が影響しているからです。

 

ただ、つまるところ、お金に対する日本人のマイナスのイメージは、ときの為政者が民衆へ植付けたものです。決して、暮らしのなかで日本人が自然発生的に感じたことでありません。

 

ですから、これまでのようにお金に目を背けるのではなく、日本人は、そろそろお金に正しく向き合うことが大切です。

 

では、お金とは何なのでしょうか?結論から先に述べますと、それは「信用」です。

 

世の中には、価値があるモノがたくさんあります。車や時計といった物品、お米やパンといった食品、また情報、技術、サービスなどにも価値はあります。僕たちは、価値があるたくさんのモノのなかで暮らしています。

 

このいろいろな価値との交換をスムーズにしてくれるのがお金です。

 

紙幣や硬貨は、ただの紙や銅やニッケルなどに国家が保証を与えているものに過ぎません。皆が共通して1万円札に同等の価値があると信用しなければ、それはただの紙くずです。皆が共通して1万円札を1万円分の価値があると信用(評価)しているから、他の価値あるモノとスムーズに交換ができるわけです。

堀江貴文さんが語る「みんな『お金』のことを勘違いしていないか?」(堀江 貴文) | マネー現代 | 講談社(1/5)

 

つまり、お金の本質は信用(評価)であり、お金は本来、ネガティブなものではなく、僕たちの生活を便利にしてくれるポジティブなものなのです。

  

05.日本的雇用関係について

お金の本質からすれば、会社から受け取る給料は、会社から受ける社員の評価といえます。毎月、送られてくる給料明細は、会社からの評価を数値化したものです。労働力も、先ほど述べました、世の中にたくさんある価値があるモノのなかの1つだからです。会社は、給料を支払うことで、社員から労働力を買っているわけです。

 

つまり、会社にとって、価値が高いとされた社員の給料は高く、低いと評価された社員の給料はそこそこということになるはずです。プロのスポーツ選手が年俸更改にこだわるのは、この「評価=報酬」を彼らがよく理解しているからです。

 

ただ、日本企業の給料制度は、この法則が当てはまりません。その理由は、日本には独特の雇用慣行があるからです。日本的な雇用慣行は「終身雇用」と「年功序列型賃金」で構成されています。

 

ご周知のとおり、終身雇用は、社員を定年退職まで雇用しつづけるというもので、年功序列型賃金は年齢や勤続年数に比例して社員の給料が上昇していくというものです。

 

このなかの年功序列型賃金は、僕は「給料の社内貯金制度」とみています。給料の社内貯金制度とは、給料の一部を会社へ預けておき、年配社員になったときに引き出して給料を厚くするというものです。

 

日本企業の賃金理論は、必要なときに“それ相応の給料”という考えに立っています。

 

若手社員の生活費はそこまで必要ありませんが、年齢を重ねるごとに社員には家庭ができ住宅や子育てなど独身時代にはなかった出費が増えるようになります。この出費が多くなる年齢に達したとき、会社に貯蓄してある未払い賃金を引き出し社員の生活を安定させるという考えです。

 

日本企業の若手社員は仕事の割に安い給料で働き、年配社員は仕事の割に高い給料をもらっているのは、この理由からです。

 

そして、この賃金理論は、日本的雇用慣行のもう一方の要素である終身雇用によって支えられています。

 

日本の労働者は、定年まで勤める終身雇用が前提ですから「会社への労働力の提供」と「会社から受け取る報酬」のバランスを生涯年収で考えることができました。会社に貯金している給料の全額を、定年までに支払われるなら“それで良し”としてきたのです。

 

しかし、現在、過去に花形と呼ばれていた大企業から、お堅い業界とみられていた金融機関まで、数多くの企業で整理解雇や早期退職が実施されています。先日、経団連の中西宏明会長も「正直言って経済界は終身雇用なんてもう守れないと思っているんです」と発言した通り、既に日本企業の多くは、終身雇用を堅持できません。

 

終身雇用が堅持できず、もし仮に年功序列型賃金だけが雇用慣行として残れば労働者は割を被ります。未払い賃金を引きおろす前に整理解雇や早期退職にあえば、労働と報酬の収支は釣り合いません。

 

終身雇用が堅持できず労働と報酬の交換条件が成り立たないのならば、若手薄給の年功序列型賃金は改正しなければなりません。

 

いま求められているのは、現在の仕事の「質、量、責任の大きさ」によって給料が決まる適正な賃金制度です。

 

06.日本人の仕事観、お金観が企業をブラック化させる

この日本人の「仕事観」、「お金観」が企業をブラック化させています。労働を尊ぶことは、会社を尊ぶ考えに通じます。仕事への感謝は、会社への感謝に通じます。会社への強い想いれは法律を軽視させます。

 

また、お金を卑しいとする価値観は、日本人から給料について深く考える思考力を奪います。会社のためなら、深夜残業が続こうが、休出が連勤しようが、またそれに対して給料が支払われなくても、口に出せない社内の雰囲気を作り出してしまうのです。

 

特に、経営者や上司などの年配者は、この日本独特の仕事観やお金観に強く縛られています。

 

経営者や上司が若手社員だった頃は、猛烈社員や企業戦士という言葉がもてはやされていました。コンプライアンスの意識は、日本社会に浸透しておりませんでした。上からは厳しい罵詈雑言を浴びせられ、顧客からの無茶な注文にも笑顔で接してきました。残業が深夜まで及び、会社に連泊したこともあります。家庭をかえりみず休日出勤もたくさんしました。

 

経営者や上司は、このような数々の苦労を乗り越えてきたから“いまの自分”があると信じています。

 

「部下にも早く自分と同じように一人前に成長してもらいたい」と経営者や上司はおもっています。だから、自分と同じように会社を家族のように愛し、自分と同じように数々の苦労を乗り越え、自分と同じように会社のために猛烈に働くことを部下に求めてしまいます。

 

決して、経営者や上司に悪意があるわけではありません。自分と同じように働くことが、結果として部下の“将来のためになる”と固く信じているからです。

 

しかし、経営者や上司が会社のために猛烈に働けてこれたのは、会社が自分の将来を保証してくれたからです。人生を保証してくれるから、人生をかけて会社に尽くすことができました。

 

ただ、現在の日本企業は、先ほどの経団連の会長の言葉にもあったように、社員の将来を保証してくれていません。特に、これからは予測困難な時代がきます。人工知能やロボットテクノロジーなどの驚異的な進歩によって、将来は、現在ある職業の多くがなくなるといわれています。現在の若手社員は、このような不確実の未来を生きていくわけです。

 

経営者や上司が過ごしてきた時代とは、労働環境も社会環境も大きく異なる時代です。時代背景が異なるにも関わらず、「自分と同じように」を部下に求めるのは、やっぱり酷過ぎます。このような現在社会の閉塞感が、労働者を精神的に追い込んでいるのではないのでしょうか。

 

日本の「仕事観」「お金観」「日本的雇用慣行」などは、既に制度疲労を引き起こしています。確かに、かつては合理的であったのかもしれませんが、時代の経過とともに、それは合理性を失ってしまいました。

 

この時代とのズレが企業をブラック化させてしまいます。決して、経営者や上司の人が悪いわけではありません。日本の社会システムが時代についていけなくなってしまっているだけなのです。

 

ですから、過去から受け継がれてきた当たり前だと思っているものに、僕たちは今こそ疑問を投げかけることが必要なのではないのでしょうか。

 

これからの労使関係は、かつてのような「社員は家族の一員」」という疑似的な家族関係ではなく、会社は、社員とは雇用契約書にもとづいた契約関係であるということを強く意識するべきです。また、労働者も、会社の一員になるのではなく、会社を取引先のようにとらえることが大切です。

 

つまり、労使は「対等関係」にあると双方が意識しあうことが重要です。

  

07.開かれた転職市場が必要

会社と労働者が対等関係に居続けるためには、社員はいつでも会社を辞められる状態にありつづけなければなりません。

 

このためには「転職市場を活性化」する必要があります。

 

転職市場が活性化し労働者の間で転職熱が高まれば、企業は社内制度の見直しを余儀なくされます。企業は、優秀な社員が流出しないために、また新たに優秀な社員を採用するために、社内制度をあらゆる角度から見直します。この過程で賃金規定や合理性を失った労働慣行が改善されていきます。

 

つまり、転職市場の活性化は、ブラック企業を駆逐し、また企業のブラック化を防ぐ有効的な手段になるわけです。

 

また、これまでの日本企業は中途採用に冷たい態度でした。しかし、それが現在は変わりつつあります。科学技術の進歩により、産業構造はこれから大きく変わります。それにともない、例えば富士フイルムが化粧品事業に乗り出したように、大企業や中堅企業で看板事業の取りかえ作業が盛んにおこなわれるようになります。

 

いうなれば企業の「第二の創業」です。第二の創業には、社内にない新しい知識や経験が必要です。企業は、社内に不足する経験者を社外に求めるようになります。とくに現在は、スピードが勝敗の大きな分かれ道になります。日本企業は、これまでのように社員を社内養成する時間的余裕はありません。

 

そのため日本企業は中途採用に前向きになっていきます。

 

ですから、転職市場を活性化するための企業側の環境は整いつつあります。残るは、労働者側の転職に対する後ろ向きの姿勢を変えるだけです。

 

08.転職に前向きにさせる

日本人は、子どものころに先生や親から「会社には長く勤めるもの」と教えられています。ですから、日本人は転職には消極的です。そう語る僕も、職を転々とする父親やそれに苦労する母親の姿をみてきましたから、退職や転職には消極的でした。また、父のように、会社をころころと変えることは悪いことだ、と考えていました。

 

ただ、実をいうと20世紀の初頭まで、日本人労働者は職を転々とする働き方のほうが主流でした。

 

例えば、かつて「渡り職工」という働き方がありました。渡り職工とは、熟練工の親方のもと、特定の企業には定着せず、企業間を請負形式で渡り歩く働き方です。彼らはより高い報酬を求めて、まるで渡り鳥のように企業間を移動していたのです。

 

しかし、企業にとって渡り職工たちとの賃金交渉は苦痛で、仮に交渉が決裂すれば優秀な人材は社外へ流出してしまいます。このため企業は、新卒一括採用を導入し、社員を社内養成するという雇用政策にきりかえたのです。そして、社員を社内にできるだけ長く引き留めるために、企業は勤続年数に応じてメリットが上がる年功序列型賃金や積立式の退職金を考案しました。さらに、メディアを通じ「生涯一企業」の魅力を日本人に植付けていきます。学校や家庭も、それを強力にサポートします。

 

日本人に流れる長期勤続の美徳観は、このようにしてつくられたものです。日本人のDNAに深く根付いたものではありません。

 

新卒一括採用が本格的に導入されたのは戦後ですから、歴史も70年ほどしかありません。それ以前の日本は、転職が盛んだったのです。

 

こういう意味では、日本人の転職に対しての消極的な価値観を変えるというよりは、元のかたちに戻すともいえます。いずれにしても、日本人の転職に対して前向きにしていかなければなりません。

 

09.リツアンがやるべき「使命」

転職市場を活性させるためには、派遣業界を健全化する必要があります。自分が派遣会社の経営者だから、そういっているわけではありません。

 

「派遣制度は求職者を強力に守ってくれる盾」になると僕は信じています。

 

面接が重視の採用制度には限界があります。求職者は数回の面接では、会社の内情という舞台裏を知ることはできません。会社も数回の面接では、求職者の能力や人柄を見極めることができません。

 

例えば、求職者は、面接会場では自分にとって都合の悪い話はしません。短所についても、よくよく聞けば長所になる定型文で返ってきます。また、会社の面接官が語る内容は、会社の理念がいかに素晴らしいとか、会社がいかに成長できる場であるかなど抽象的な話ばかりです。

 

結局、面接は互いの表面を理解することにしか役に立たず、真相を知ることはできないのです。これが入社後の雇用のミスマッチという労使双方の不幸を引き起こす原因になります。

 

会社には、会社ごとの色があります。企業文化とか、企業カルチャーとかいうものです。例えば、同じ営業職でも、ガツガツと足で稼ぐ営業マンを求める会社もあれば、1つの案件に対して戦略を立てて提案する営業マンを求める会社もあります。提案型営業が得意な人にとって、1日数十件のアポ電は地獄です。逆に、考えるよりも行動することが好きな人にとっては戦略の考案は、こちらも地獄になるわけです。

 

つまり、人物のカラーによって、同じ会社でもホワイトになれば、ブラックにもなるわけで、会社選びは相性判断が極めて大切です。

 

会社との相性判断は、派遣を利用すれば可能です。求職者は、まず興味がある会社で派遣社員として働いてみて自分との向き不向きを判断することができるからです。実際に働いてみれば、職場の雰囲気や人間関係といった「ソフト面」も、労働時間や残業時間などの「ハード面」も知ることができます。その上で求職者は、実際に転職するかどうか決めれば、入社後の雇用のミスマッチという不幸を回避することができます。

 

採用の現場では、転職回数の多さは不利に働きます。しかし、派遣先企業の職場変更(シフトチェンジ)は所属派遣会社を退職しているわけではありませんから、求職者の経歴書にはキズはつきません。このため相性が合う企業がみつかるまで、いろいろな職場を経験することが可能です。

 

さらに、派遣のメリットは、入社するのも、退社するのもハードルが低く設定されていることです。憧れの企業には正社員として入社するのは難しくても、派遣社員としてなら採用されやすいものです。逆に、正社員で務めた会社を退職するのには抵抗を感じますが、派遣先企業のシフトチェンジは比較的抵抗が少ないはずです。

 

そして、相性が合う企業がみつかれば、派遣先企業へ直接雇用を申し出ればいいとおもいます。普段からモチベーションを高くして働いていれば、派遣先企業の上司は直接雇用を強力にサポートしてくれるはずです。実際、これまでリツアンから派遣先企業へ直接雇用された多くのエンジニアは、派遣先企業の上司からの推薦がありました。

 

企業にとり、この上司(社内の人物)からの推薦は心強い採用材料です。先ほども述べましたように、面接には、雇用のミスマッチというリスクがあります。企業は中途採用で大きなリスクを冒すよりも、人柄も能力もよく知る派遣社員を中途採用したほうが確実です。また、求人媒体へ高額な広告費を支払うコストも必要なく、派遣社員から直接雇用という採用方法は企業にメリットしかありません。

 

いってみれば派遣制度を利用した企業の「リファラル採用(縁故採用)」です。

 

このような「職場体験後の転職」や「リファラル転職」は、職業紹介会社や転職エージェントには提案できません。たしかに、彼らは多くの企業情報を持っています。ただ、それは求職者と比べての数量であり、彼らの持つ情報は企業の深層まで到達していません。

 

これが転職における人材派遣会社の最大のメリットです。派遣を一時的な雇用の安定装置としてではなく、転職活動のツールとして活用してもらいたい。これが「派遣制度は、求職者を強力に守ってくれる盾になる」と話した根拠です。

 

そして「派遣会社を経由した転職方法を根付かせる」これが現時点での僕たちリツアンの「使命」です。

 

10.リツアンの「スローガン」

この人材派遣会社を経由した転職方法は、リツアンだけがやっていても、それは小さな一石で終わり、大きな潮流にはなりません。リツアンの仕組みに追随してくる人材派遣会社を増やしていく必要があります。

 

このためには、同業他社からリツアンが「模範」となる存在にならなければいけません彼らのお手本になるためには、まずリツアンが技術派遣業界のなかで1番を取ることが大切です。1番を取れば同業他社は、リツアンに負けず劣らずと仕組みを真似るようになるはずです。

 

この理由から、今後のリツアンは技術派遣業界のなかで1等賞を目指します。

 

ただ、1等賞を取るといっても、売上、利益、社員数、成長率などの数字を目標にすると、知らないうちに数字に拘束されてしまう危険があります。数字目標がノルマになり、数字目標だけが独り歩きしてしまうかもしれません。その結果、僕たちは、いつのまにか目的を忘れてしまうかもしれない。だから、数字目標を置くことは避けます。

 

1等賞を取る内容を、抽象的だけれども皆が共感しやすい言葉のなかからみつけます。

 

そのヒントを内勤社員と飲んでいるときにみつけることができました。この目的を達成するためには、内勤社員が要です。まず、内勤社員が率先して伝道者にならなければなりません。ですから、彼らが日常的に使う共感しやすい言葉が最適です。彼らは普段から「イケてる」という言葉を使います。

 

「イケてる」とは、今流行りの、先端的な、先鋭的な、当世風の、時流に乗った、つまり、古くない新しさを表す言葉です。少し軽い言葉に聞こえてしまうかもしれませんが、今後はこの「イケてる」をリツアンのスローガンに選びました。古臭くない新しいさまの派遣会社を目指していきます。

 

イケてる派遣会社は「ひとりひとりにマージン率を公開している」「派遣料金も公開している」「メーカー社員よりも年収が高い」「派遣先企業へ引き抜きOK」「研修は任意で本気で面白い」「退職しても出戻りOK」「理不尽な派遣先企業はどんどん契約解除する」「10年目からはさよならマージン」 

 

この仕組みを真似しない会社は、イマドキじゃなく時代遅れの派遣会社。

 

こんな風潮を派遣業界に流行らせていきます。数字目標なんかに踊れされることなく「やりたい目的」だけを実直に追及していきます。

 

ですから、今後のリツアンの「スローガン」は、 “いちばんイケてる派遣会社“でいきます。

 

11.リツアンの「理念」と「社会貢献」

人材派遣会社を経由した転職方法を根付けば、転職市場は活性化されます。新天地に飛び込むのは勇気がいります。未知への恐怖です。だから転職に消極的になります。

 

ただ、派遣制度を利用すれば、新天地に選ぼうとしている会社のハード面もソフト面も可視化できます。また、仮に新天地へのチャレンジが失敗しても、派遣を経由すれば自分の経歴書にキズがつくことはありません。自分との相性が合う会社をみつけるまで、何度でもチャレンジができます。

 

相性が合う企業をみつけることができれば「好意の返報性」によって派遣社員の社内評価は必ず高くなります。評価が高ければ、派遣先企業の上司は直接雇用を強力に応援してくれるはずです。これにより、面接制度で生じる雇用のミスマッチという労使間の不幸を回避することができます。

 

この結果、これまで派遣という働き方を敬遠していた層にも派遣を経由した転職活動のメリットが伝わり、会社と労働者の付き合い方は変わってきます。すなわち、いつでも辞められるという対等な労使関係が確立できるのです。

 

企業は、優秀な社員が流出しないために、また優秀な社員を獲得するために、社内のあらゆる制度を見直します。企業は、雇用関係は契約関係との意味を考えるようになります。企業は、年功序列型賃金を見直し、正当な労働報酬とは何かと考えるようになります。企業は、社内をブラック化させてしまう古い雇用慣行を見直します。

 

これにより、冒頭で紹介しました「安月給で休日も少ないけれど、いまの仕事はものすごくやりがいがあって満足している!」と目をキラキラ輝かせて語る人を救ってあげることができます。

 

これが僕たちリツアンがおこなう「社会貢献」です。

 

そして、このような労働環境が実現したとき、おそらく労働者は、“いきいき“としているとおもいます。つまり・・・  

"いきいきと働く人を増やす会社″

これが僕たちリツアンの「理念」です