『ピンハネ屋』と呼ばれて

株式会社リツアンSTC 代表取締役 野中久彰

『障がい者雇用』について

障がい者雇用促進法が改正され、2018年4月より障がい者法定雇用率が変更されました。変更された点については以下の通りです。

 

平成30年4月1日から国や地方公共団体を含む全ての事業主区分において引き上げられており、民間企業の場合、今まで2%であったものが2.2%となりました。また今回の改正によって、障がい者雇用の義務が生じる対象事業者の従業員数も変更されました。従来は50人以上の従業員を抱える民間企業に障がい者の雇用が義務付けられていましたが、その基準となる数が45.5人以上となり、対象範囲が広がりました『障がい者雇用義務のルールが変更されます!』
www.somu-lier.jp

以上のように変更されたことにより、リツアンは約500名のエンジニアの方を正社員で雇用していますから、約11名の障がい者の方を雇用しなければなりません。ただ、リツアンにとって11名の障がい者雇用は、正直にいってハードルが高い。実際にも雇用できておりません。

 

言い訳になりますが、その理由は大きくわけて2つあります。

 

1つ目は、リツアンの業種・職種の問題です。

 

リツアンは、人材派遣会社です。派遣会社は営業会社です。モノづくりの会社と違い営業会社は、職種が限られています。モノづくりの会社ですと、例えば梱包やラベル張りなどのピッキング作業、生産工程での組立・検査作業、工場の清掃・備品管理などの庶務作業など障がい者の方が活躍できる仕事があります。

 

一方、派遣会社の内勤業務は、派遣先企業や派遣社員の営業・労務フォロー、応募者の面接や入退社手続きの人事採用、請求書作成や給料処理などの総務事務の3種類しかありません。これに加えて、リツアンは内勤業務の一部をエンジニアさんにお願いしることにより、浮いた経費をエンジニアに還元し給料を厚くするという方針をとっております。つまり、ただでさえ少ない派遣会社の内勤業務が、リツアンではさらに少ないわけで、障がい者の方だからという理由ではなく、そもそもお願いする仕事自体がないわけです。

 

また、モノづくりの会社ですと生産工場など広いスペースを持っていますが、営業会社のリツアンは内勤社員が効率よく働けるだけのスペースで充分です。リツアンの本社は、掛川の商店街の一角にあるほどですから業務するスペース自体がありません。

 

もちろん、だからといって法律を犯してもいいという理由にはなりません。ですから、これまでリツアンでは、ファイリング作業などの障がい者採用をハローワークを通じて常時募集しておりました。また、知人の障がい者の方などにお願いして、リツアンで働いてくれる人を探しておりました。ただ、結局、採用には結びつきませんでした。

 

募集しても採用に結びつかなかった理由は、障がい者の方やそのご家族は「就労に対して不安(心配)」を持っているからです。これが2つ目の理由です。

 

障がいをもつ子の親御さんとお話をすると、就労先企業が障がいに対してちゃんと理解しているか、職場での人間関係はうまくやっていけるか、仕事をする上でのサポートはどうか、通勤を含めた安全面は大丈夫か、など数多くの不安を抱えていることを知ることができます。

 

ですから、障がいをもつ子のご両親は、障がい者の受入態勢がちゃんと整っているかどうか重視します。そして、この障がい者雇用の受入態勢が整っているのは、比較的に大企業に多くみられます。大企業では、障がい者の業務をサポートする人員をちゃんと確保していますし、障がい者雇用に対してのノウハウや経験があります。つまり、リツアンのような障がい者雇用に対して未熟な中小企業が、いくら障がい者雇用を募集しても、なかなか集まらないわけです。

 

従って、これからリツアンが法定雇用率を守っていくためには、ここら辺を改善していかなければなりません。

 

また、障がいをもつ親御さんと話をして印象的だったのは、今回の法定雇用率の引き上げのニュースは喜ばしいもの。ただ、企業が法定雇用率を守るためだけに、やむくもに障がい者を雇用するのは避けてもらいたいと話していました。子どもには別に今すぐに働かなくてもいい。それよりも、できるだけ長く安心して働ける職場環境を整えてもらいたい。自分たちが老後になり、いずれは旅立つときがくる。そのときに子どもがちゃんと社会のなかで生きていける、またそれをサポートしてくれる会社を探していると。

 

以上のように、法令遵守ばかりが先行して、本質が伴わないかたちの障がい者雇用だけはなんとしてでも避けなければなりません。これまで僕がブログで話してきたことと完全に矛盾しますが、それを踏まえた上で、障がい者雇用に対しては法定雇用率を守ること以上に大切なことがあると思います。

 

企業が法定雇用率を守るためだけに障がい者を雇うことは、彼ら、彼女らの人権を侵害します。タイムカードに打刻するだけの出勤では、あなたは会社から必要とされていない人間ですと宣告されているようなものです。

 

ですから、数値目標よりも、障がい者がちゃんと戦力になり「いきいき働ける」職場づくりこそ最も最優先すべきことです。

 

・・・と、いうわけで、リツアンは「駄菓子屋」をつくります。オープンは夏ごろ。

 

駄菓子屋は、子どもたちの大切なコミュニティの場です。駄菓子屋は、子どもたちの遊び場であり、情報交換する場であり、地域社会とかかわる場です。時代は、昭和から平成、平成から令和へと変わりましたが、子どもたちの本質は昔からまったく変わっておりません。いくらSNSやオンラインゲームが浸透しているとはいえ、子どもたちが気軽に集まれ肌感で遊べる場は大切です。もしかすると、いまだからこそ、駄菓子屋の重要性が増しているのかもしれません。

 

そして、この駄菓子屋の店主は、横山夫妻にお願いしました。横山夫妻は、車いすで生活しています。横山夫妻は古くからの友人で、リツアンの社員でもあります。現在の横山夫妻の仕事は、障がい者の雇用や社会との関わりについて、日本各地のシンポジュウムや会議などに参加して調査レポートをまとめてもらっています。また、横山パパさんは、掛川市の小学校へ福祉教育の授業をボランティアでやってたりもします。ですから、小学生にも人気者で、駄菓子屋の店主は天職です。

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子どものころに障がい者とたくさん触れ合うことは大切なことです。僕たち大人は、例えば坂道で車いすの方とであっても、背中のグリップをおしてあげたほうがいいのか、逆にその行為が失礼にあるのではないか。あるいは、交差点で目が不自由な人と会っても手を貸すべきなのかどうか、いろいろと考えてしまいます。その結果、多くのケースでは何もせずに終わってしまいます。これはなにも僕たち大人が冷たいからではありません、障がい者の方と触れ合ってきた経験が少ないからです。つまり、どうしていいかわからない。逆に、子どものころに障がいを持った方とたくさん触れ合っていれば、躊躇することなく自然と行動にうつせるはずです。

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*こんなふうに・・・(笑)

 

さらに、この駄菓子屋は、お菓子を売るだけじゃなく、障がい者の作品も展示・販売しようと考えています。ご承知のとおり、障がい者の絵や陶器などの作品はすばらしいものがあります。これを駄菓子屋で展示・販売します。個人的な意見ですが、とくに絵などは額縁選定をしっかりやれば、マジでカッコよくなり十分に売れると思います。誤解を恐れず言えば、障がい者の作品は、福祉色が先行してボランティア的な感覚で購入されているように思われます。そうじゃなく、この駄菓子屋では本気で「この作品が欲しい」と思わせて購入してもらいます。

 

ただ、芸術に関しては、僕たちは素人です。そこで額縁選定や作品づくりの講師を「KOMAD」や「日暮里作業場」に集う東京藝大の研究者や学生くんたちにお願いしようと考えています(マジで売ります)

 

そして、このビジネスが軌道に乗れば給料もたくさん払え、障がい者もたくさん雇用できます。作品づくりが仕事です。会社に出勤しなくても、自宅で作業ができます。つまり、ある種のノマドワーカーであり、採用エリも日本全国にひろがります。

 

また、この駄菓子屋で利益がでれば、それを資金に各地に店舗展開ができます。接客が得意な方、作品づくりが得意な方、向き不向きにあわせて職種を選ぶことができます。

 

もちろん、この僕の野望は、横山夫妻には話してはおりません(二人のプレッシャーになりますから笑)。ただ、僕は本気で駄菓子屋で利益をだそうと考えています。本業の派遣業そっちのけで、これからいろいろとアイディアを出していきます。

  

「障がいを持った方が日常に溶け込んだ社会」これを目指す過程で、結果として、リツアンが障がい者の法定雇用率が守れるようになれば、もっと欲をいえば法定雇用率なんて気にしないほど多くの方が楽しみながら働ける会社に皆で育てられれば・・・

 

駄菓子屋『横さんち』楽しみにしていてください。

 

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ちなみに、内装設計は東京大学で建築専攻している南くんにお願いして、ロゴデザインは東京藝大のデザイン科のみらのちゃんにお願いしました!

 

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