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『ピンハネ屋』と呼ばれて

株式会社リツアンSTC 代表取締役 野中久彰

よく質問されるプロ契について

最近、プロフェショナル契約(以下、プロ契)についての問合せが多いのでブログでも簡単に説明させて頂きます。

 

プロ契移行への資格について

プロ契とは、入社4年目以降から適用になる弊社独自の給与規定です。プロ契に移行する基準は以下の2つをクリアーしていれば全エンジニアが適用となります。

 

・クライアントからの評価

 特別高い条件ではありません。クライアントからのクレームや改善指導など著しく勤怠が問題でなければ誰でもクリアーできます。

 

 ・弊社からの評価

 こちらも特別高い条件ではありません。タイムカード(出勤簿)が正しく記入でき、請求書やご自身の給料の計算ができればクリアーです。リツアンでは請求、給料計算をエンジニアの皆さんにお願いしています。それは会社運営費を低くして、その分をエンジニアの皆さんの給料へ反映する目的からです。そして、この請求、給料の計算も決して難しいものではありません。派遣料金に当月の規定労働時間及び時間外時間を参照して計算してもらえばいいだけです。

 例えば請求計算、仮に派遣料金が4,500円、当月の規定労働時間は160時間、時間外労働は30時間の場合の計算は、①規定労働の請求:4,500円×160h=720,000円、②時間外労働の請求:4,500円×1.25×30h=168,750円、①規定労働の請求+②時間外労働の請求=888,750円。この金額が当月の請求であり、この計算をして頂くだけでOKなのです。また、給料の計算も専用のエクセルフォーマットに規定労働時間と時間外労働時間を記入すれば自動計算されます。

 リツアンは、会社運営費を抑えることで利益幅を確保しております。この会社運営費の中で最も比重が高いのは内勤社員の人件費。つまり、内勤社員の人件費を低くすることがリツアンの生命線ということになります。ただ、人件費は内勤社員の給料です。給料が安ければ誰でもモチベーションは上がりません。だから、リツアンは彼らの給料には手をつけない。むしろ平均以上の給料を支払うようにしています。

 私たちが選択しているのは内勤社員の総数を減らす努力です。内勤社員の総数が少なければ当然、合計の人件費は低くなりますから。内勤社員の業務を分析して、プライオリティが高い業務だけに特化させ、委託できることはエンジニアにお願いする。このプライオリティの高い業務とは新規、増員営業や労務管理などのエンジニアフォロー。逆に委託できる業務とは請求、給料計算など。特にリツアンのように派遣料金をオープンにしていれば臆することなく請求、給料計算を派遣社員にお願いができます。そもそも理系のエンジニアの皆さんにとっては請求、給料計算など小学校低学年の算数レベルですから。

 プロ契導入の目的や背景

 プロ契を導入した目的の1つは、フリーランスのエンジニアが集うプラットフォームのような会社を作りたかったからです。私自身が組織に属し、その組織のルールとか規律とかの中でパフォーマンスを発揮するのではなく、もっと自由で会社に雇われない働き方に魅力を感じていたから。そんな個人的な理由が大きいかもしれません。

 エンジニアが集うプラットフォームのような会社だから、クライアントへの正社員引き抜きに対してもOK、出戻りもOK、こんな自由な空間をつくりたかったから、これがプロ契導入の1つの理由です。

 そしてもう1つは、私たち技術系派遣会社の役割について再検討してみて、その役割に限界を感じたからです。私たち派遣会社の役割はおおよそ以下の4つに絞られると思います。 

 

・派遣労働者への企業や仕事の紹介

・派遣労働者のスキルアップ

・派遣労働者のフォロー

・派遣労働者の生活や雇用の安定

 

 派遣労働者への仕事の紹介は、派遣会社の最大の役割です。私は常々、派遣制度は日本の雇用問題を解決する1つの手段になりえると言ってきました。例えば、若年層の離職率の高さが雇用問題の1つとして取りざたされております。実際、厚労省のデータによれば入社3年以内に3割以上の新卒社員が会社を退職しています。ただ、この3割という数字は、今に始まったことではなく20年以上前から新卒社員の3割近くは会社を辞めております。つまり、若年層の離職率の問題は、今の若者に原因があるのではなく、日本の雇用システムに構造的な欠陥があるのです。

 面接は難しい。これは本音です。いくら人事のプロでも数回の面接で人の内面まで把握することはできません。また、求職者側も外からの企業研究では、会社の内側を覗き見ることはできません。所詮は、実際に働いてみなければ、人物も企業もその真価などわからないのです。でも、ある一線で決断をしなければならない、ここにギャンブル的な要素が就活にはあるのです。ギャンブルですので当然、失敗してしまうこともあるでしょう。その割合が20年前から変わらない3割なのだと思います。このギャンブルの要素を軽減させてあげること、これが派遣会社の最大の役割だと思います。

 リツアンは、エンジニアに対してリツアンを踏み台にしてくれと話します。正社員での採用のチャンスがあれば、どんどん頑張ってくれといいます。これをたまに会社側からの労働者の雇用放棄だといわれることがありますが、それは全然違うことです。リツアンが目指しているのは、派遣社員の在籍期間を長くすることではなりません。それは会社が利益を得るためだけの手前勝手な考えです。そうではなくリツアンは本気で派遣を就活の新しい手段にしてほしいと思っています。定年まで派遣社員として勤務をしたいと思う方はどれほどいるのでしょう。機会があればキャリアアップ、キャリアパスしたいと考えるのが自然かと思います。その自然の流れを会社がせき止めるのではなく応援する、その相乗効果が会社の利益につながると心から信じているからです。

  派遣労働者のスキアップについて。誤解を招くこと承知で申し上げると、私はサラリーマン時代から派遣会社によるエンジニア教育には疑問を持っておりました。派遣会社による社員研修は、本当にエンジニアのスキルアップの機会になっているのかどうか懐疑的でした。私が以前に勤めていた大手の技術系派遣会社では、社会人マナーなどを教える人間力研修、基礎的な知識を再確認する技術研修の2つの社内研修が存在しておりました。ただ、この社員研修は、参加者のエンジニアからはあまり評判がいいものではなく、休日を返上してまで受講するレベルではないと再三に渡って指摘を受けていたのを記憶しております。

 また、内勤社員の私の目からもエンジニアへの社員研修は会社の体裁を取り繕ったようなもので決して充実していたようには見えませんでした。極端なことをいえば、会社の社員研修は求職者へ向けた企業PRの要素が強く、今在籍しているエンジニアのスキルアップを真剣に考えたようなものではなかったように思えます。

 といいますか、そもそも技術系派遣会社による社員研修には限界があります。それは派遣会社の宿命ともいえるものなのですが、技術系派遣会社のクライアントは業界・業種ともに多岐にわたります。搬送系メーカー、家電メーカー、半導体、工作機械、ソフトハウスなど様々な業界のクライアントと取引をしなければなりません。なぜなら派遣会社は景気動向に経営が大きく左右されるからです。経営のリスクを回避するためにも、半導体業界の景気が悪ければ自動車業界、自動車業界の雲行きが怪しくなれば医療関連のメーカーなど多くのクライアントと口座を結ばなければなりません。ある特定の業界だけと取引していれば、その業界に特化した研修も可能なのかもしれませんが、景気が悪くなってもエンジニアの雇用を守るという観点に立てば技術系派遣会社は取引のすそ野を広げざるを得ないのです。

 つまり、技術系派遣会社の研修のテーマは広く浅い知識の習得であり、その業界に特化した研修プログラムは組まれていません。また、クライアントごとに開発工程の進め方は違います。仮に同業他社から派遣先をシフトしたとしても、エンジニアは今の派遣先の業務の進め方を1から習得しなければなりません。従って、エンジニアのスキルアップは派遣会社がおこなうものではなく、現実はクライアントの担当者様に依存せざるを得ないのです。派遣会社ができる研修は、CADなどのツールを学ぶ基礎的なものに限られてしまうのです。

 もちろん、だからといって社員研修を派遣会社は放棄してはなりません。リツアンでは他企業や他団体とタイアップした社員研修を導入しております。まだまだ試験的な段階ですが、今後はカリキュラムを充実していこうと思っております。例えば、このブログでも再三登場するBizjapan、彼らは東京大学の卒業生や在学生を中心とした団体で定期的に勉強会を開催しております。リツアンがその勉強会のスポンサーになり、都内の理工系の学生、大学院生、研究者の卵たちと一緒になりリツアンエンジニアも学ぶ、そんな社員研修を企画しています。

 何かを習得する際に最も大切なのは、それを習得しようとする意欲。この場合の意欲は、必要性にかられた義務感よりも、自発生的に生まれた興味のほうが効果は大きくなります。そして、この興味の多くは、他者との関わりのなかで芽生えていくものです。例えば、父親が歴史小説を好きならば、その子どもも歴史が好きになるように。また、興味は、知識量を容易に増やせてくれます。好きなものは誰でも簡単に覚えられますから。

 リツアンが考える社員研修は、技術領域の知識量を増やすことを目的としていますが、その知識量を支える興味にも注目していきます。優秀な若手と机を並べ一緒に学べば、必ず彼らから刺激を受ける、この刺激が興味へと発展すれば、本当の意味でエンジニアのスキルアップの機会になるのではないでしょうか。

 また、リツアンが今取引させて頂いているクライアント様からも社員研修をタイアップしたいとの申し出を頂いております。優秀な学生が多く参加する勉強会は、クライアント企業にとっても魅力的です。新卒者に向けた企業PRの機会としても最適だからです。クライアントの大会議室を貸し出しても、講師を担当したとしても十分に費用対効果は得ます。例えば、人間力研修の部分を採用担当者であるはずのクライアント担当者が教えてくれれば、リツアンエンジニアにとっても、学生にとっても有意義であるはずです。また、テクニカルな部分は技術部の担当者が教えてくれれば、技術系派遣会社が独自でおこなう基礎的な学習よりも実践的内容になるはずです。1つのテーマを個別で対応するよりも、それぞれのメリットを保ちながら、共同で開催するれば、結果として大きな成果は得られる、これがリツアンが考える社員研修です。

 

 派遣労働者へのフォローですが、このフォローの主なものは、派遣社員からの派遣会社へのクレームと派遣先企業でのトラブルの2点に集約されます。

 まず、この派遣社員からの派遣会社へのクレームをみれば、その大半は賃金の低さやマージン率の高さに対する不満です。ただ、リツアンは幸いなことに賃金やマージンに対して不平不満を口にするエンジニアは皆無に近いかと思います。つまり、派遣会社の2大テーマの1つ、派遣会社へのクレームは、そうめったに発生はしません。クレームが発生しなければ対応する内勤社員も他の派遣会社の半数で済みます。

 次の派遣先企業でのトラブルは、主な原因は職場での人間関係です。どうしても性格が合わない上司が派遣先にいる場合、その職場をシフトをしなければ問題解決にはなりません。ただ、そういったケースは本当にまれで、多くは勤怠が人間関係を崩す原因となります。勤怠はモチベーションの表れです。低い賃金で責任ばかり負わされれば、やっぱりモチベーションは下がります。クライアントからの評価が賃金に反映されていれば、その期待に応えようとするものです。その結果、良好な人間関係が気付けるのではないでしょうか。事実、リツアンでは他の技術系派遣会社よりも復社率や職場トラブルは低いように思えます。従って、リツアンではエンジニアフォローは同業他社のように多くの工数を割く必要はなく、毎年のチャージアップや仮に派遣先が終了になった場合の対応のみで済んでいます。

 

 派遣労働者の生活や雇用の安定についてですが、最も大切なテーマです。ただ、派遣事業といっても職種は様々です。製造ワーカーの派遣もあれば、事務員さんの派遣もあります。リツアンが主に担当している分野は技術派遣の領域です。このエンジニア派遣は、様々な派遣事業の領域のなかでも最も安定した職種だといえます。先のリーマンショックの際には、製造派遣や事務員さん派遣の領域では、正確な数字は分かりませんが大半が派遣切りで契約が終了になってしまいました。

 ただ、エンジニア派遣の稼働率の平均はリーマンショック後の最悪だった08年秋以降でも年間75%を下まっておりません。通常時の稼働率の平均は95%~98%ほど、つまり20%下がったことになります。また、リーマンショックは、100年に1度の大不況と呼ばれ、政府からも緊急の雇用対策がなされ雇用調整助成金などで労働者の賃金の6割近くを保証してくれました。

 従って、エンジニア派遣の雇用のリスクを考えた場合、そのリスク検討の精度を上げるためには、リーマンショック時を参考にするのではなく通常の不況時を材料にしなければなりません。例えば、2011年の3月の大震災の際の稼働率は、90%~92%ほどです。もちろん2011年の震災の際は、リーマンショックから日本経済が立ち直っている最中での出来事ですので、その余波はまだまだ残っておりましたのでもう少し高い稼働率で考えればいいのかもしれませんが、ただ、私個人としては、震災後のこの稼働率を1つの経営指標にしております。つまり、経常利益率10%を目指せば雇用安定化は図れるということです。そして、それは先ほども述べましたように会社運営費をおさえることだけで十分可能な数値だといえます。

 また、こちらも誤解を招くことになるかもしれませんが、あえてご指摘させて頂くと、エンジニア派遣の場合、同じクライアントに10年以上勤めているといったケースは別に珍しいことではありません。長く勤務される方は本当に長く務め、逆に転職(シフト)を繰り返す方は残念ながら決まっています。他の技術系派遣会社は、自社のマージン率の高い理由を、契約終了になった際の保障費用だと説明しています。ただ、エンジニア派遣の業界に長く身を置く私からすれば、それは転職(シフト)を繰り返す方のための保障であり、長くクライアントに勤める方には関係のないことなのです。厳しい表現ですが、それは長く務めているエンジニアが転職(シフト)を繰り返す方の為に費用を補てんしているともいえるのです。

 

 以上のように技術系派遣会社の役割を再検討して結果、リツアンができることは(1)の派遣労働者への企業や仕事の紹介だけ。エンジニアへの教育訓練費用、フォロー費用(労務管理費用)、雇用安定化費用、これは詭弁であって真実ではありません。そして、この紹介という役割だけで1人のエンジニアから毎月数十万も利益を得ることはアンフェアです。もちろん還元率を高めれば採用件数が増加して会社規模が大きくなるという狙いも本音の一部にはあります。ただ、それ以上にアンバランスな状態に危機感を感じていたということがプロ契導入の真の理由です。

  私は営業畑を長く歩んできました。営業マンが最も大切にする契約内容は、相互利益のバランスです。片方に偏った契約は長続きしません。それは最終的には自社の不利益になります。

 派遣契約には、派遣先企業、派遣会社、派遣社員の3人が登場します。この3人の利益のバランスが最も大切なのです。給料が上がった派遣社員は当然モチベーションが上がる、それを見た派遣先企業は当然派遣社員への評価が上がる、派遣社員への評価が上がれば契約期間も当然延長される、派遣社員への高い評価は派遣会社への高い評価へと当然発展する、派遣会社の高い評価は優先的に次の派遣オーダーにつながる、このポジティブサイクルが営業マンにとって最も大切なことなのです。これがプロ契を導入した真の狙いです。

プロ契の賃金体系

 基本的には非常に簡単な仕組みです。毎月の派遣料金から65,000円の会社利益と社会保険の事業主負担額を引かさせて頂き残りが総支給額となります。

 社会保険料の会社負担額について、エンジニアの自己負担なのかと聞かれますが、社会保険は事業主と労働者で折半です。例えば毎月50,000円が社会保険料として給料から相殺されていれば、同額を会社も負担して合計100,000円を年金機構などに納めています。

 といいますか、例えば65万円の総支給額(標準報酬月額)であれば社会保険料の事業主負担額は約9万円になります。会社の1人当たりのエンジニアから頂く利益が6万5千円しかなく、さらに事業主負担の社会保険料も負担するとなると会社利益は-2万5千円になってしまいます。これではやはり・・・経営が成り立ちませんよね。プロ契の賃金計算については過去の記事がありますので、そちらを引用させて頂きます。

 

 

プロフェッショナル契約(入社4年目以降~)

この時給制で3年間働いてもらって4年目以降からは「プロフェッショナル契約(以下、プロ契)」という弊社独自の給料制度が適用になります。プロ契とは、会社の利益を定額制にして残りをエンジニアの給料として還元しようという給与制度です。具体的にいえば1人の時給制のエンジニアから頂く弊社の平均利益は1ヵ月当り12万円ほどです。この利益を6万5千円まで下げ残りをエンジニアの給料へ還元しようという制度となります。プロ契給料の計算式は次の通りになります。

★ エンジニア給料=「派遣料金」-「6万5千円(弊社利益)」-「社保等の会社負担額」

プロ契のTN氏の給料明細

すこしわかり難いのでTN氏の給料明細をみてご説明いたします。彼は現在45歳、NH氏と同じ大手自動車部品メーカーで生産技術職として勤務してもらっています。彼の派遣料金はNHと同額の1時間当たり4,000円。2015年3月度の残業は43時間。当月は休日出勤も9時間ありました。なので派遣料金は92万7350円。この派遣料金から弊社の利益6万5千円と社会保険料の会社負担額である7万1461円を引かせてもらい残りは79万889円。この79万0889円がTH氏の3月度の給料(総支給額)になります。ここから所得税やTH氏の社会保険料の自己負担分などを控除して手取りは65万9644円になります。彼の職場もNH氏と同じように忙しく残業も多いので今期の年収は1000万までは超えないにしても、900万円台の後半にはなるかと思います。
 
こちらが実際のTH氏の給料明細です。もちろん本人の了解を得ております。ちなみにプロフェッショナル契約の場合は、給与ソフトの給与明細の他に派遣料金(請求金額)などが掲載された明細の2通を発行して総支給額の内訳を明確にしております。

 

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