『ピンハネ屋』と呼ばれて

株式会社リツアンSTC 代表取締役 野中久彰

派遣のマージン率をゼロにしました(さよならマージン)

クライアントにエンジニアを紹介したあとも、派遣会社がずっと同じ割合のマージンを受け取り続ける。

それは、本当に妥当なのだろうか。

派遣会社が最初に行う「紹介」には、もちろん価値があります。
営業活動も、契約調整も、労務管理も、トラブル対応もあります。派遣会社が果たしている役割を、すべて否定するつもりはありません。

ただ一方で、エンジニアが同じ職場で長く働き、派遣先との信頼関係を築き、日々の業務を安定して担えるようになったあとも、会社が同じように利益を取り続けてよいのか。

会社の設立当時から、僕はずっとこの違和感を持っていました。

その考えから生まれたのが、リツアンの「プロフェッショナル契約」、通称「プロ契」です。

プロ契は、勤続4年目以降のエンジニアを対象に、会社の利益部分を大きく下げる給与制度です。
具体的には、月の売上高から「会社利益としての6万5千円」と、「社会保険料の会社負担分などの必要経費」を差し引いた額を、エンジニアの総支給額とする仕組みです。

入社して4年ほど経つと、エンジニアの皆さんは派遣先の職場にも、リツアンの社内ルールにも慣れてきます。
内勤社員が行う労務対応やフォローの工数も、入社直後と比べれば少なくなります。

であれば、その分だけ会社の取り分を下げ、浮いた分をエンジニアに還元する。
これが、プロ契の基本的な考え方です。

当時の制度設計では、プロ契をマージン率に換算すると平均19.4%でした。
一方、勤続3年目までの通常契約では、マージン率は29.4%でした。

つまり、プロ契に移行することで、会社の取り分は約10ポイント下がります。
その分、エンジニアの給与に反映される。

これは、リツアンが大切にしてきた「会社のための制度」ではなく、「エンジニアに利益を戻すための制度」です。

そしてその後、リツアンはさらに一歩踏み込みました。

勤続10年を満了したエンジニア、つまり入社11年目以降の方については、会社利益分を原則としていただかない制度を導入しました。

僕たちはこれを「さよならマージン」と呼んでいます。

ただし、ここは誤解のないように、正確にお伝えしておきます。

「さよならマージン」は、法律上のマージン率が0%になるという意味ではありません。
社会保険料の会社負担分や、雇用を維持するために必要な経費は残ります。

そこまで会社が負担しなければ、リツアンは赤字になってしまいます。
会社が赤字になれば、制度そのものを続けることができません。

ですから、リツアンがゼロに近づけるのは、あくまで「会社の利益部分」です。
勤続10年を超えて長く働いてくれたエンジニアの労働対価から、会社が利益を取り続けるのではなく、その分を本人に戻していく。

それが、「さよならマージン」の本質です。

この制度を導入した理由は、大きく2つあります。

1つ目は、リツアンには退職金制度がないからです。

リツアンは、一般的な会社のように、定年時にまとまった退職金を支給する制度を設けていません。
その代わりに、長く在籍してくれたエンジニアには、毎月の給与の中でしっかり還元していきたいと考えました。

勤続10年満了後に会社利益分の6万5千円を本人に戻すと、単純計算では年間78万円の増額になります。

たとえば、22歳で入社し、60歳まで働いた場合、入社11年目以降の27年間がこの制度の対象になります。
年間78万円の増額が27年間続くと、合計では2,106万円です。

もちろん、これは制度説明上の単純試算です。
実際の年収は、単価、稼働、契約条件、制度改定などによって変動します。

それでも、長く働いてくれたエンジニアに対して、会社利益分を毎月の給与として戻していくという考え方は、退職金に近い意味を持つ還元だと考えています。

「マージンを下げて、会社は本当にやっていけるのか?」

そう不安に思う方もいるかもしれません。
結論から言えば、十分にやっていけると考えています。

なぜなら、リツアンにとっても、この制度には大きな意味があるからです。

勤続10年を超えたエンジニアは、単に派遣社員として働いているだけの存在ではありません。
派遣先から見れば、すでに現場をよく理解し、信頼関係を築いている優秀な人材です。

その方が派遣先企業から直接雇用の声をかけられることもあります。
また、「リツアンは長く働くほど会社利益を減らし、本人に還元する会社だ」と知られれば、新しくリツアンに入りたいと思ってくれるエンジニアも増えるかもしれません。

つまり、「さよならマージン」は、エンジニアだけにメリットがある制度ではありません。
リツアンにとっても、信頼を積み上げ、人が集まる会社になるための制度です。

そしてもう1つの理由は、リツアンの使命である「派遣を経由した転職活動」を、より現実的なものにするためです。

エンジニアの年収が上がり、搾取されていないと感じられる環境で働ければ、仕事への向き合い方も変わります。
生活の不安が減れば、目の前の業務にも集中しやすくなります。

その結果、派遣先での評価が高まり、直接登用や転職のチャンスにもつながりやすくなる。

リツアンは、社員を会社に縛りつけたいとは考えていません。
むしろ、リツアンを通じて市場価値を高め、より良い職場へ進んでいけるなら、それは会社として誇るべきことだと思っています。

会社が利益を取り続けることよりも、エンジニアが正当に評価され、より良いキャリアを手にすることの方が大切です。

「さよならマージン」は、その考えを制度にしたものです。

派遣会社の利益のために、エンジニアが働くのではない。
エンジニアの未来のために、派遣会社がある。

リツアンは、そういう会社でありたいと思っています。

今回の記事も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
少しずつではありますが、リツアンの考え方や制度について、これからも正直にお伝えしていきます。

PS:ちなみに、「さよならマージン」のTシャツは、入社祝い品としてエンジニアの皆さんにお配りするために制作しました。
こういうところだけは、少しふざけています(笑)

 

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rstc928.hateblo.jp
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